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多胡入野;万葉歌碑と古碑
 富岡製糸場から東へ17、8卅ると高崎市山名町に着く、ここは万葉の時代多胡郡と称された。万葉集巻14は東歌が収録されている。好きな歌が多いが、一番人口に膾炙しているのは「我が恋は まさかも悲し 草枕 多胡の入野の おくも悲しも」ではないかと思う。私の恋は今も悲しいずっと先も悲しい…、万葉歌が好きな閑人トップ3の一つ。
 多胡の入野がどんなところか機会があれば行ってみたいところだった。この歌の歌碑もあるということで積年の想いを果たすことになった。山名町に入ると山裾の田んぼの中に「入野小学校」とあった。入野との最初の出会いに感激した。山上古碑の標識に従って細い道路を進むと沢沿いの駐車場に着いた。
山上古碑への石段を少し登ると右側に念願だった万葉歌碑があった。大きな石碑に万葉仮名の歌が彫られて、脇に解説板があった。
「私の恋しく思う心は 現在も悲しいし ずっと先も胸の詰まる思いです」、なかなか良い訳ではないかと思う。悲しは愛しとしても良い。いろいろな解釈ができるが、すっと読むだけで胸にしみる良い好きな歌。



 山上古碑と古墳を見学した後、山名城址まで歩いた。途中万葉碑が幾つか。この先にも万葉歌碑の道が続いている、全体で20碑以上あるようだ。夕闇が迫ってきた、何時か機会があったら再訪したい。その時は今回パスした多胡古碑にも行ってみたい。


山上古墳、この左に古碑がある
| 万葉 | 22:56 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
珠洲の海

 珠洲に行ったら是非行きたいところがあった。まじめな越中国主家持が出挙のため珠洲を訪れたときの歌、

珠洲の海に朝開きして漕ぎ来れば 長浜の浦に月照りにけり巻17・4027
家持らしい良い歌、この歌碑が珠洲の春日神社にある、是非見てみたかった。



万葉仮名の歌碑

歌碑の万葉仮名、他に説明はなし、少々不親切
 

 農民に稲種を強制的に貸付け、秋に3〜5割の高利をつけて納入させるのが出挙。家持一行の能登巡行は、この出挙稲の割り当てだった。朝早く珠洲の海をこぎ出して、ようやっと長浜まで来たら月がこうこうと照っている、家持の胸に去来したものはどんな感慨だったのであろうか

 

| 万葉 | 22:05 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
「思うどち」
 

 万葉集に「思うどち」を読み込んだ歌が何首かある。

1月と2月のNHK「日めくり万葉集」でそれぞれ1首ずつ取り上げられていた。

・新たしき 年の初めに 思うどち い群れておれば 嬉しくもあるか・・・道祖王 (巻19・4284)

・酒杯に 梅の花浮かべ 思うどち 飲みてし後は 散りぬともよし・・・大伴坂上郎女 (巻8・1656)

 気を許せる親しい仲間が群れて酒を酌み交わし良いひと時を過ごす。万葉人も今も同じ。

古希も近くなるといろいろな集まりに出るのが楽しみ、いくつかのOB会、同期・同窓会、ハイク仲間、蕎麦・平家など趣味の会、お酒が入る「どち」の会は楽しさもひとしお。

 いっぽうで「独居老人」ということも気になる、「どち」の仲間になれるようにはどうすればいいのだろうか、考える必要がある。

 

 他の万葉歌

・梅の花 今盛りなり思うどち かざしにしてな 今盛りなり・・・(巻5・820)

春日野の 浅茅が上に思うどち 遊ぶ今日の日 忘らえめやも・・・(巻10・1880)


諏訪梅林にて

| 万葉 | 11:47 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
山陰の文学散歩−因幡国庁跡
 「平家物語を読む会」の講師H先生以下21名は11月8日羽田発6時40分の1番機で鳥取に飛んだ。今回は家持最終歌の地;因幡の国と平家落人伝説の里;隠岐四島を訪ねる旅。
 最初に向かったのは因幡国庁跡、大伴家持が万葉集最後の歌を読んだところ。
続日本紀によると天平宝字2年(758)6月、家持は因幡守に任ぜられた、41歳だった。時は孝謙天皇が即位、女帝の信頼を得た藤原仲麻呂が政治の中枢にあった。家持と近い橘諸兄が退けられ、孤立感を強めていた矢先、明らかな左遷だった。
 国庁跡は鳥取県国府町にありその規模は東西150m南北216m、面積約32000屬隼廚辰燭曚氷くない。越中に比べると左遷だったことが良く分かる。


因幡国庁跡:礎石などがあるが鄙びた公園といった感じ

 翌年正月一日に歌を詠んだ。
因幡の国庁として、饗(あえ)を国郡の司等に賜へる宴の歌一首
「新(あらた)しき 年の始めの初春の 今日降る雪の いや重(し)け 吉事(よごと)」 (4516)
不遇な境遇の貴公子が、「この初春の、今日降る雪のように、良き事が、次々に積もるが良い」と詠んだ。 めでたい豊年を祈る国守の立場とともに、名門貴族大伴家の再興をこめた気持ちも伝わってくる。

 歌碑は万葉仮名、隣に佐々木信綱の解説歌、「ふる雪の いやしけ吉事 ここにして うたいあげけむ 言ほぎの歌」の立派な歌碑があった。少々おせっかいが過ぎる気がする。

万葉仮名の最終歌:歌碑は国庁跡から歩いて10分程度のところにある
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| 万葉 | 11:58 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
雪月花
 今年は雪の降る日が多い。今日も日中雪が降った、積もるほどではなかったが裏山は薄っすら雪化粧。夕方にはここ数日ぐずついていた天気がやっとあがり、東の空に満月。梅の花はほぼ満開。風流な雪月梅花の日だった。
 雪月花(せつげつか、せつげっか)は、白居易の詩「寄殷協律」の一句「雪月花時最憶君(雪月花の時 最も君を憶ふ)」による。雪・月・花という自然の美しい景物を指す語であるとウィキペディアにある。

日本では大伴家持の歌がある。 巻18‐4134 宴席にて雪月梅花を詠む歌一首
「雪の上に 照れる月夜に 梅の花 折りて送らむ はしき子もがも」
〔雪の上に月の照り映えているこんな夜に、梅の花を手折って送ってやれる、かわいい娘がいればよいのだが〕
この歌が日本の雪月花の最初だそうだ、さすが家持。
こんな晩には梅の花を浮かべた澄んだ酒、が似合う。


| 万葉 | 22:13 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
埼玉(さきたま)の万葉歌・・・防人の歌(八幡山古墳)
 八幡山古墳は地図では分かり難いが道標が多く容易に着いた。事務所で記帳をして先ず防人の歌碑に面会した。
・足柄の み坂に立ちて 袖振らば 家なる妹は さやに見もかも・・・巻20 4423
・色深く 背なが衣は 染めましを み坂給(たば)らば まさやかに見む・・・4424
 夫婦唱和、夫は埼玉の群の上丁藤原部等母麻呂(ふじはらべのともまろ)、妻は物部刀自売(とじめ)。上丁だから一般兵士、多分農民だろう。防人に出征する夫を武蔵の国府まで見送り、別れの席で詠みあった歌だろうといわれる。東国埼玉群の農民夫婦がこんな歌を残したことは凄いこと、碑の裏側にそんな誇らしげな文が彫ってあった。

 
埼玉の防人歌碑

歌碑のある八幡山古墳・・・別称「関東の石舞台」
| 万葉 | 11:12 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
埼玉(さきたま)の万葉歌・・・小崎沼と埼玉神社
 行田は足袋や埼玉古墳群で知られる。特に稲荷山古墳から発掘された金錯銘鉄剣は115文字の金石文が古墳時代の高い歴史的価値を持つものでずっと現物を見たいと思っていた。
 他にこの地を歌った万葉人とその歌碑にも興味があった。
常磐・北関東・東北道と走り羽生ICから行田まで2時間半ほど。最初に下埼玉(さきたま)の小崎沼に行ってみた、少し迷ったが田んぼのなかの小森が天祥神宮、なかの小沼の脇に墓石のような万葉歌碑があった。石柱費の正面に「武蔵小崎沼」とあった。後面と右面に万葉歌が刻まれているが分かり難い。この碑は宝暦3年(1753)忍城主阿部正因が刻んだということだ。
・後面の歌  「埼玉の 小崎の沼に 鴨ぞ翼霧(はねき)る 己が尾に 降り置ける霜を 払うとにあらじ」・・・巻9 1744
・右面の歌  「埼玉の 津に居る船の 風をいたみ 綱は絶ゆとも 言な絶えそね」・・・巻14 3380
 津を思わせる風情はないが当時は利根川の入江になっていたのか、赤城下しの強い風でもやい綱が切れても・・・素直な恋心の東歌。

小崎沼の石柱碑

 この後さきたま古墳群の端にある埼玉神社を訪ねた。石段の中腹に二基の灯篭がありこの燈身に同じ歌が万葉仮名で刻まれている。元禄十年(1697)氏子達の奉納ということだ。
 
左右の石灯籠の燈身に刻まれた万葉歌
| 万葉 | 23:01 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
万葉歌の立山
 万葉集 巻17に立山の歌がある。越中国主だった大伴家持の「立山の賦一首併せて短歌」、これに応えて掾(じょう)大伴池主の長歌と短歌が続く(4000〜4005)、何れも夏でも雪を抱く神の支配する山として崇め讃えている。
家持(4001)と池主(4004)の短歌各一首
・立山(たちやま)に 降り置ける雪を 常夏に 見れども飽かず 神からならむ
・立山に 降り置ける雪の 常夏に 消ずてわたるは 神ながらとぞ

 深田久弥は万葉に歌われた立山は剱岳だろうとした。太刀(剱)を立ち連ねたようなさまから「たちやま」と名付けられた。家持の「片貝川の清き瀬に・・・」とか、池主の歌の「巌しかも岩の神さび・・・」とかいう描写は、剱岳以外には考えられない・・・と百名山に書いている。

 2年前、「万葉集を読む会」の皆さんと雨晴海岸から富山湾を挟んで立山連峰を遠望した。左手に剱岳が堂々と屹立していて、立山は影が薄い。家持の国主館は雨晴に近い、深田久弥のいうように万葉歌の立山(たちやま)は剱岳かこれを含めた立山連峰が対象なのだろう。


 もう一首、家持の歌。
・立山の 雪し消らしも 延槻の 川の渡り瀬 鐙(あぶみ)漬かすも・・・4024
 延槻(はひつき)川は今の早月川、剱岳が源流だ。歌のなかには片貝川がでてくる、この源流も剱岳。何故か雄山が源流の常願寺川は万葉では影が薄い。


縦走路から雄山を望む、左は龍王岳
| 万葉 | 20:56 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
万葉ウォーク:二上山
 明日香を歩いていると雄岳・雌岳の二上山は何処からでも良く見える。何年か前、当麻寺から見たこの山が強く印象に残っている。いつか悲劇の皇子、大津のお墓にお参りしたいと思っていた。
 初瀬を歩いた後、午後2時、二上山の駅に降りた。古い町並みを適当に山に向かって歩いたら「専称寺」というお寺に出た。境内の大きな枝垂桜が満開、今年の桜はずい分早い。

専称寺境内の枝垂桜、早々と満開。

 国道の陸橋を渡ると登山口、軽い山歩きと思っていたが結構急登もあり一時間ほど汗をかいて大津皇子の御陵に着いた。英明なために若くして縊られた皇子の辞世の歌と姉・大伯皇女の二上山の歌を黙詠しながらお参りした。
・百伝ふ 磐余の池に 鳴く鴨を 今日のみ見てや 雲隠りなむ 巻三−416
・うつそみの 人にある我や 明日よりは 二上山を 弟世とわが見む 巻二−165
 御陵の後ろに飛鳥浄御原や藤原京跡、天武・持統御陵が見下せる。1300年それぞれどんな想いでいたのだろう。
  
大津皇子御陵

 小ぶりな葛城二上神社の先が何にもない平らな雄岳頂上。急な一下りで馬の背、ここから百mほど先が雌岳。帰りの時間に余裕がないので雌岳はスキップ。馬の背から龍谷コースを下った。
沢沿いの急な道を下ると「祐泉寺」に出た。この山は湧水が豊富、この小さな山の何処からこんなに水が出てくるのか不思議。
 祐泉寺から大きな溜池を迂回し二上神社口駅方面を目指し適当に歩いた。

 この日の「万葉ウォーク」は初瀬・二上山とあわせて5時間強、20kmほどの行程だった。予定した電車の時間に間に合わせるため結構早歩きでくたびれた。
| 万葉 | 14:16 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
万葉ウォーク:「初瀬・吉隠(よなばり)」
 孫の春休みに京都の娘夫婦を訪ね、ついでに奈良の万葉ウォークが恒例になった。今回は「初瀬・吉隠」と「二上山」を歩いた。
 「初瀬・吉隠」は但馬皇女と穂積皇子の歌で知られる。但馬皇女は高市皇子の妻の立場で異母兄の穂積皇子と恋におちいり噂になった。3人とも天武が父の異母兄妹、今ではなかなか信じられない関係、でも但馬の穂積に対する求愛は強い。そんな2人の代表的な歌がここで詠まれた。

・「人言を 繁み言痛み 己が世に いまだ渡らぬ 朝川渡る」 巻二116 但馬皇女
・「降る雪は あはにな降りそ 吉隠の 猪養(いかひ)の岡の 寒からまくに」 巻二 203 穂積皇子

 但馬の歌はひたむきな悲壮感がある。でも皇女が朝の初瀬川を渡るというのはどういうことなのだろう。皇子・皇女の不倫、初瀬の何処かで逢瀬、別れて人目につかないよう朝靄の立ち込める初瀬川を渡る、他にも様々な情景が思いやられる。今の初瀬川も水量は多い、どんな思いでこの川を渡ったのだろう。
 穂積の歌は男としてあまり評判が良くないようだ。情熱の但馬にたじたじ、歌も思うように返せない、忸怩たる思い。そんな皇子が亡き皇女を偲んで切々たる思いのたけを歌う。見栄も何もない、男の心情に溢れている。良い歌だ。穂積はこの後、大伴郎女を娶り深く愛したとのこと。男心も隅に置けない。
 吉隠川は長谷で初瀬川に合流する。初瀬川になって2kmほど下流に但馬皇女の歌碑が、吉隠の公民館に穂積の歌碑がある。歌碑を見ながら往時を偲んだ。


但馬皇女の歌碑:道路沿いにひっそり、雑草を取ってさっぱりした。

穂積皇子の歌碑:国道165の脇を上がった公民館にある。

  
初瀬川2景:川幅はないが雨上がりのせいか水量は多い。

吉隠の棚田、近鉄特急が走り抜けた。

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| 万葉 | 21:01 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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